小児科医てつろーです。
釣りを楽しんでいる皆さん、魚を食べるのはお好きですか?
魚を食べることが体に良いことはみなさんもご存じとは思いますが、実は魚の油(フィッシュオイル)にはアスリートに嬉しい様々な効果があることがわかってきました。
今回は、フィッシュオイルの効果・効能を解説します。
フレッシュオイルとは

三大栄養素の1つに脂質がありますが、脂質の主成分は脂肪酸です。
そして、脂肪酸には、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸があり、フィッシュオイルは不飽和脂肪酸に分類されます。
- 飽和脂肪酸…常温で固形のアブラ(バター、マーガリン、ラードなど)
- 不飽和脂肪酸…常温で液体のアブラ(オリーブオイル、ごま油、フィッシュオイルなど)
フィッシュオイルはω-3脂肪酸と呼ばれる不飽和脂肪酸で、具体的にはドコサヘキサエン酸(DHA)やエイコサペンタエン酸(EPA)のことを指します。
従来より、フィッシュオイルには心血管疾患の予防があることが指摘されていました。
ところが、近年、スポーツ領域において筋持久力の向上、筋肉痛の予防、筋力の増強、心拍数および酸素摂取量の上昇抑制、最大筋力低下の抑制、体脂肪率減少などの効果を示す可能性があることがわかってきました。
フィッシュオイルに関する研究、応用
フィッシュオイルの研究は、1960年代に遡ります。
当時、デンマークの白人と、デンマーク領であったグリーンランドのイヌイットを対象とした心臓病の調査で、イヌイットの心臓病による死亡率がデンマークの白人の1/7であり、その理由が血中のEPA濃度の違いによるもの(イヌイットが約60倍多い)という報告が最初の研究です(1)。
続いて、1980年代の日本において、千葉県の農村部と漁村部の脳血管疾患や心臓病の発症率を比較したところ、漁村部においてこれらの病気の発症率が有意に低いということが報告されたのです(2)。
そして現在では、EPAはエパデールという商品名で薬剤として市販されており、閉塞性動脈硬化症および高脂血症に適応があります。
また、EPAとDHAの合剤がロトリガという商品名で販売されており、高脂血症に適応を持っています。
魚の油(フィッシュオイル)はスポーツに有用!?
近年、フィッシュオイルがスポーツ領域において以下のような効果を示すことがわかってきています。
- 筋持久力の向上、運動時の酸素摂取量の減少、運動によるつらさの減少(3)
- 筋肉痛の抑制、最大筋力低下の抑制、関節可動域の低下の抑制(4)
- 大学駅伝選手の5000m走タイムが7%向上(5)
- 健康な60-85歳の高齢者に対し、6か月間のω3脂肪酸投与で大腿の筋量が3.6%増加
すなわち、フィッシュオイルの効能としては、
- 持久力の向上
- 筋肉痛の予防
- 筋量増加
などがあげられます。
そのため、普段私が趣味として活動しているテニスはもちろん、長距離走やサッカー、バスケなど競技時間が長いスポーツにおいて有用と言えるでしょう。
同じ操作を繰り返し続けるルアーフィッシングにも有用と考えられます。
抗炎症作用、抗血小板作用も!
また、フィッシュオイル(EPAおよびDHA)は、体内で抗炎症作用、抗血小板作用も示すことがわかっています。

我々人間の生体内では脂肪酸の1種であるアラキドン酸(AA)から、プロスタグランジンやロイコトリエンといった炎症物質がつくられており、アラキドン酸から作られたプロスタグランジンからはトロンボキサンA2という、血小板を凝集する(血を固める)効果を持つ物質が産生されています。(上図の左側)
フィッシュオイルの主成分であるEPA、DHAはこのアラキドン酸と拮抗する働きを持つだけでなく、レゾルビンやプロテクチンといった抗炎症物質を生成することで抗炎症効果を示すと言われています(6)。(上図の中央、右側)
また、トロンボキサンA2の働きを抑え、血をサラサラにする効果もあります。
摂取量の目安は?
フィッシュオイルの効果の指標として、EPAとAAの比(EPA/AA比)が重要になります。
スポーツ選手の競技力向上および抗炎症効果を発揮するためには、EPA/AA比が0.8以上であることが重要であると言われています(7)。
EPA/AA比の平均値は、60歳代で0.60以上であるものの、40-50歳代では0.4程度、30歳代では0.3程度と若い世代ほど低くなっています。10-20歳代においては0.1以下の例も散見されると報告されています(8)。
若年層では魚を食べる機会が減っていることが、このEPA/AA比の低下に関与していると考えられます。
国際オリンピック委員会(IOC)が提唱するサプリメント摂取に関するコンセンサス(9)では、運動による筋肉回復などを促す可能性があるとして、ω3脂肪酸の摂取量として1日2000mg程度を推奨しています。
さまざまな魚100gごとの、フィッシュオイルの含有量を以下に示します。

アスリートに対してω3脂肪酸を継続的に投与した研究では、6週間~3ヵ月程度の継続摂取により、EPA/AA比が2倍程度上昇したとの報告があります(5)(7)。
なので、目安としては1日あたり1~2切れ程度の青魚を摂取するのがよいでしょう。
また、調理方法としては生が最も好ましいとされています。焼き物や煮物では約20%、揚げ物では約50%のDHA・EPAが減少してしまいます。
- フィッシュオイルには、DHA・EPAといったω3脂肪酸が含まれている
- ω3脂肪酸には、持久力向上・筋肉痛予防・筋量増加などの効果が期待できる
- 十分なフィッシュオイルを摂るには、1日100-200g程度の生の青魚を摂取することが望ましい
美味しく魚を食べて、強い体を作り、釣りに励みましょう!
この記事を書いた人

自己紹介:20代現役小児科医。医師として働く一方で、社会人テニスプレーヤーとして草トーナメントなどに参加している。テニスブログ「テニスのゆりかご」にて、社会人テニスプレーヤー向けの大会情報・科学的テニス解説などを発信している。
インスタグラム:tennis_01483
参考文献
- Dyel・berg J, Bang HO:Ahypothesis on the development of acute myocardial infarction in Greenlanders. Scand J CIin Lab lnvest Suppl 161:7-13. 1982
- Hirai A et al:Eicosapentaenoic acid and platelet fullction in Japanese. Lancet 2(8204):1132-1133
- Kawabata F et al:Supplementation with eicosapentaenoic acid-rich fish oil improves exercise economy and reduces perceived exertion during submaximal steacly-state exercise in normal healthy untrained men.Biosci Biotechnol Biochem 78(12):2081-2088. 2014
- 横井香里:魚油(n-3多価不飽和脂肪酸), Functional Food, 12(2):91-96. 2018
- 小林悟:EPAと長距離競技者の持久力,FOOD Style 21,7(10):75-78. 2003
- 有田誠:脂肪酸クオリティによる炎症の制御, The Lipid 30(4):430-434. 2019
- 河村亜希、杉田正明:女子長距離選手における24か月間のEPAおよびDHAの摂取による血中脂肪さん濃度の変化, 日本栄養・食糧学会誌, 73(5), 199-205. 2020
- 佐久間一郎,岸本憲明,筒井裕之:わが国男女における年齢別EPA・アラキドン酸比の現況:若年層での低下と動脈硬化性疾患若年発症への懸念, 日本未病システム学会雑誌, 16:407-9.2010